コラム
北九州市小倉北区の司法書士 – 相続手続・遺言書作成・不動産登記
コラム
数年前ですが相続登記の依頼で、相続人の一人が刑務所に在監中、という事例がありました。
通常、相続登記をする場合は、相続人の全員が合意する遺産分割協議を成立させることが必要です(遺言がある場合などは別)。
誰か一人でも欠けていたら相続登記を進めることはできません。
もし相続人の中に行方不明の人や認知症の人がいるような事情がある場合は、その人の代わりとなる人を家庭裁判所に選んでもらう(不在者財産管理人、成年後見人など)ことで、手続きを進めることになります。
では今回のように“刑務所に在監中”という相続人がいる場合はどうなるのでしょうか。
まず、この在監中の相続人(Aさん)は行方不明でも判断能力に問題がある訳でもないので、上に書いたような不在者財産管理人や成年後見人、というような話ではありません。
そして遺産分割の協議は、全員集合して行うことまでは求められていませんので、在監中のAさんも内容に同意さえすれば、遺産分割を成立させること自体はできます。
問題となるのは、Aさんの“実印”と“印鑑証明書”です。
協議がまとまると遺産分割協議書を作成することになりますが、相続登記の場合これに相続人の全員が“実印”を押して“印鑑証明書”を添付することが求められます。
しかしAさんは刑務所にいるので、実印の準備も、印鑑証明書の取得も不可能です。
ではこのままAさんが出所するまで遺産分割協議書は作れない・・・??
レアケースなので知識はなかったのですが、色々調べてみると参考になる先例がありました。
刑務所在監者が代理人によって登記を申請する場合には、本人の拇印である旨を刑務所長または刑務支所長において奥書証明した委任状を添付してすべきものとされる。
(昭和39年2月27日民事甲第423号民事局長・通達)
簡単にいうと、実印を押すべき書類に「本人の拇印」+「本人の拇印に間違いない旨を記した刑務所長の印」があればOKということです。
この通達は登記義務者としての印鑑証明書の代わりという事例ですが、印鑑証明書の代わりになるという点では今回の遺産分割協議書も、これを使えば行けそうです。
遺産分割の内容については、他の相続人がAさんと手紙でやり取りをして、合意は出来ていました。
私はAさんの刑務所長の奥書証明の欄を設けた「遺産分割証明書」を準備し、関係者の方と一緒に刑務所まで面会に行きました。
面会では書類の内容や拇印、刑務所長印について説明し、書面と返送用封筒を差し入れました。 ちょっと不安でしたが後日、Aさんの拇印と、Aさんの拇印に相違ないと記された刑務所長印が押された遺産分割証明書が届き、無事、相続登記が完了しました。
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